第11回 カム機構
今回のゴール
- カム機構の仕組みを理解し、Fusion で設計する
- 接線関係を使ってカムのシミュレーションを行う
- 揺動クランク機構を理解し、設計する
授業動画
| 動画 | 内容 |
|---|---|
| 11.1 DXFファイルの書き出し・カム | DXF書き出し(前半)、カム機構の設計(後半) |
| 11.2 カム | 揺動クランク機構 |
準備
以下の .f3d ファイルをダウンロードし、Fusion にアップロードしてください。
| ファイル | 用途 |
|---|---|
| 12. カム機構.f3d | カム機構のテンプレート(フレーム・軸・ハンドルが用意済み) |
| 13. 揺動クランク.f3d | 揺動クランクの組み立て練習(参考) |
| 13. 揺動クランク(完成版).f3d | 揺動クランクの完成見本(参考) |
コンポーネントの整理
Fusion のブラウザパネルでコンポーネントが増えてきたら、以下のような親コンポーネントで整理しましょう:
- 筐体(きょうたい):フレーム、側面板、天板など
- 原動節(げんどうせつ):ハンドル、軸、ギアなど動力を伝える部品
- 従動節(じゅうどうせつ):カム、フォロワなど動力を受ける部品
機構の種類について
前回の歯車機構と今回のカム機構の他にも、からくり作品で活用できる機構はたくさんあります。
| 機構 | 特徴 |
|---|---|
| スパーギア | 平行な軸間で回転を伝達(前回学習済み) |
| かさ歯車(ベベルギア) | 直角に交わる軸間で回転を伝達 |
| ウォームギア | 高い減速比が得られる。逆転防止機能がある |
| ラック&ピニオン | 回転運動を直線運動に変換 |
| カム機構 | 回転を上下動に変換(今回学習) |
| スライダクランク | 回転を直線往復運動に変換(ピストン運動) |
| 揺動クランク | 回転を揺動運動に変換(今回学習・参考) |
参考:からくりすと — 各機構のアニメーションが見られます
1. カム機構とは
カム機構 は、回転運動を往復運動(上下動など)に変換する機構です。からくり人形やオルゴールなどに広く使われています。
カム機構の構成
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| カム | 回転する部品。形状によって運動パターンが変わる |
| フォロワ(従動節) | カムの表面に沿って動く部品。上下運動の出力を行う |
| フレーム | カムとフォロワを支える構造体 |
カムの種類
| カムの形状 | 動きの特徴 |
|---|---|
| 円板カム(偏心カム) | なめらかな上下動。最もシンプル |
| ハート型カム | 等速で上昇・等速で下降。一定リズムの動き |
| 卵型カム | ゆっくり上昇・すばやく下降(またはその逆) |
| 不定形カム | 自由な動きを設計可能。創作向き |
2. Fusion でカム機構を設計する
12. カム機構.f3d を開きます。フレーム、軸、ハンドルがあらかじめ用意されています。
カムの作成

- 適当な平面にスケッチを作成します
- 円 を描きます(例:直径 22.5 mm)
- 円の中心に 軸穴 を描きます(直径 2 mm)
- 重要:軸穴の位置を中心からずらします
偏心量と上下幅の関係
軸穴を円の中心から どれだけずらすか で、上下の動きの幅が決まります。
- ずらした距離の 2倍 が上下動の幅になります
- 例:中心から 6.25 mm ずらすと → 上下 12.5 mm の往復運動
ずらす距離が大きいほど動きは大きくなりますが、機構への負荷も大きくなります。
- スケッチ寸法 で穴の位置を正確に設定します(例:中心から 6.25 mm)
- スケッチを 押し出し ます(厚さ 2.5 mm、MDF想定)
- 新規コンポーネント として作成し、名前を「カム」にします
カム受け面の作成
カムからの力を受け止める面は、なるべく広くする必要があります。
- 新しいスケッチで 正方形 を描きます(例:15 × 15 mm、中心に 2 mm の穴)
- 2.5 mm で押し出し、新規コンポーネント にします(名前:「カム面」)
- 剛性ジョイント で軸棒の先端に取り付けます
- ジョイント後にずれが生じた場合は、右クリック → ジョイントの編集 でオフセットを微調整します(例:-0.75 mm)
摩擦と軸曲がりへの対策
カム機構ではカムとフォロワの間に摩擦が発生します。実際に制作する際は:
- 潤滑スプレー を塗布する
- アクリル板 など滑りの良い素材を使う
- カムの 幅を増やす(MDF を重ねる)
- カム受け面を 大きくする(接触面積を増やす)
- 軸の 非支持区間を短くする(スペーサーで隙間を埋める)。軸が曲がるとカムが正しく接触しなくなります
軸(フォロワ)のジョイント設定

フォロワの棒は上下にのみ動けるようにします:
- 軸と天板を スライダジョイント で接続します
- 方向を 上下方向(Y軸) に設定します
- この時点ではまだカムと連動しません
接線関係でカムの動きをシミュレーション

カムの曲面とフォロワの面を常に接触させるには、モーションリンクではなく「接線関係」 を使います。
なぜモーションリンクではダメなのか
ギアの場合は回転角度の比で連動できますが、カム機構では「何度回転したら何mm動く」が一定ではありません。カムの形状によって変化するため、接線関係 を使って「常に2つの面が接している」という制約を設定します。
- アセンブリ → 接線関係 を選択します
- カムの外周面 をクリックします
- フォロワのカム受け面 をクリックします
- OK で確定すると、自動的に正しい位置関係が計算されます
設定後、ハンドルの回転ジョイントをドラッグして回すと、カム受け面が常にカムに接した状態で上下に動きます。
3. 揺動クランク機構(参考)
参考資料
揺動クランク機構は授業の進捗に応じて扱います。時間の都合で省略する場合もありますが、最終課題で活用することもできます。完成見本ファイルがクラスルームにあるので、興味のある人は自習してみてください。
揺動クランク機構 は、回転運動を揺動(往復回転)運動に変換する機構です。カム機構とは異なるアプローチで往復運動を実現します。
構成部品

| 部品 | 役割 |
|---|---|
| クランク | 一定方向に回転する入力部品(ハンドルで回す) |
| コネクティングロッド | クランクとロッカーをつなぐリンク |
| ロッカー | 一定の角度範囲で揺動する出力部品 |
| フレーム | クランクとロッカーの回転軸を固定する |
Fusion で揺動クランクを組み立てる

13. 揺動クランク.f3d を開きます。各パーツは作成済みですが、ジョイントが設定されていません。
- フレーム を固定します(ピン止め推奨)
- クランク をフレームに 回転ジョイント で接続します
- コネクティングロッド の一端をクランクに 回転ジョイント で接続します
- コネクティングロッド の他端をロッカーに 回転ジョイント で接続します
- ロッカー をフレームに 回転ジョイント で接続します
すべてのジョイントが 回転ジョイント であることがポイントです。

組み立てが完了したら、クランクをドラッグして回してみましょう。ロッカーが一定の角度範囲で揺動することを確認できます。
リンク比の注意
クランクの長さ、コネクティングロッドの長さ、2つの軸間距離のバランスが重要です。バランスが悪いと機構がロックして動かなくなります。13. 揺動クランク(完成版).f3d と比較して確認してください。
4. カム機構と揺動クランクの比較
| 特徴 | カム機構 | 揺動クランク機構 |
|---|---|---|
| 出力の動き | 直線往復(上下動) | 揺動(往復回転) |
| 動きの自由度 | カム形状で自由に設計可能 | リンク比で揺動角度を調整 |
| 部品点数 | 少ない(カム+フォロワ) | 多い(クランク+ロッド+ロッカー) |
| 滑らかさ | カム形状に依存 | リンク機構のため比較的なめらか |
| 製作時の注意 | 摩擦対策が必要 | 穴あけとピン接合の精度が重要 |
| からくりでの用途 | 人形の上下動、首振り | 腕振り、足踏み、太鼓叩き |
練習課題
12. カム機構.f3dでカムを作成し、接線関係でシミュレーションする- カムの偏心量を変えて、上下動の幅がどう変わるか観察する
13. 揺動クランク.f3dを自分でジョイント設定して組み立てる13. 揺動クランク(完成版).f3dと比較して動作を確認する- どちらの機構が自分のからくり作品に適しているか検討する
提出物
完成した .f3d ファイルをクラスルームに提出してください。
